ウェブ制作のヒアリングシートなんて破り捨ててしまおう!というお話

戦略

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ホームページ制作において、ヒアリングは最も重要な行程のひとつです。なぜなら、ヒアリング次第で、ホームページの方向性やクライアントとの信頼関係が決まるからです。

良いヒアリングをするには豊富な経験と知識が不可欠なため、制作会社側からしてみれば、ここで優秀な人材を投入しておかないと最終的なクオリティが確保できない、といった難しさがあります。徹底したヒアリングを売りにした格安の制作会社を見かけないのも、うなずけますね。

ヒアリング時、質問内容をまとめた「ヒアリングシート」を用いるケースも多いと思います。これは、提案に必要な情報を漏れなく入手するためのものです。セブンシックスでも、立ち上げ当初にヒアリングシートを作りました。結構、気合いを入れて作りました。

しかし現在、セブンシックスではヒアリングシートを使用していません。おそらくこの先も、使うことはないような気がします。今回は、ヒアリングシートを破り捨てた理由と、その考察についてお話します。

相手の本音を引き出すのに、ヒアリングシートは向かない。

私たちの仕事は、ホームページを制作することです。しかし、その根底にあるのは、企業が抱える課題を解決することです。ヒアリングシートは、表面的な回答を引き出すのには向いていますが、核心に迫り、本人も気付かない本音を引き出すのには向いていません。

「いつまでに公開したいですか?」「サーバは何を使っていますか?」「ドメインは新しく取得しますか?」などの明確な答えがある質問であれば、ヒアリングシートも役には立ちます。しかし、そんなものは後から電話やメールで十分に質問できる内容です。

お互いが顔を合わせる貴重な時間、より良い提案をするためのヒアリングで、本当に知りたいことはそこではありません。

すべてのビジネスは、違う。

私たちの仕事は、業種を制限していません。あらゆる業種、あらゆる課題に立ち向かっていかなければなりません。そのため、共通項目が作りにくく、質問内容も状況に応じて多岐に渡ります。 お会いする前段階で課題を特定するのは難しいですし、こちらの思い込みで見当違いの質問をしかねません。

ある程度のクオリティを保つ用途としてならヒアリングシートは機能しますが、それ以上を求める場合は最終的に個人のヒアリング能力に依存するのが実情です。

特に、私たちのメインとなるクライアントは中小企業が多いため、担当者のリテラシーも千差万別です。相手に合わせて、答えやすい質問をしなければなりません。ずっと昔、デザイン会社勤務時代に、ヒアリングシートを渡して直接記入してもらおうと試みたことがありますが、結局、相手は質問の意図が分からず困惑して最後まで記入できませんでした。

流れや思考を邪魔する。

ヒアリングシートを用いた場合、シートの記述順に質問をするのではなく、自然な流れにまかせて会話をしながら、該当項目に記入していくのが一般的かと思います。その際、該当項目を探すことに意識を集中してしまったり、ヒアリングシートに引きずられて会話の流れを歪める質問をしてしまう恐れがあります。

ヒアリングにおいて最も注意したいことは、相手の思考を中断させないことです。会話をしながら、相手の考えがきちんとまとまるようにサポートすべきです。ヒアリングシートの存在は、それらを阻害する要因となりえます。

また、こちらにとっても、真っさらな状態で相手の話が聞けるのは最初の1回だけです。最も客観的に思考できる唯一のチャンスですから、ここで頭をフル回転させたいですよね。

スタッフのスキル。

セブンシックスは、非常に小規模な制作事務所です。大きな制作会社に比べると、経験の浅いスタッフや新入社員などがいませんので、ヒアリングシートに頼らなくても必要なクオリティが担保できるというのも大きな要因です。

逆に、スタッフの教育ツールという側面から見れば、ヒアリングシートはとても有用なツールなのかもしれませんね。

信頼関係は、ヒアリングシートでは築けない。

私たちが目指すのは、一流のコンサルタントです。彼らに求められるのは物事の本質を見抜く力であり、課題を解決に導く提案力です。しかし、それだけでは信頼関係は築けません。

大前提にあるのは、「相手を理解しようとする」姿勢です。ヒアリングに関しては、「質問力」や「コミュニケーション」に焦点を当てた書籍などもたくさんありますし、スキルを高めることはそう難しくないかもしれません。でも、どんなに高いスキルがあっても、誠実さを欠いてしまえば本末転倒です。

どうしても人間は感情的な生き物ですから、好き嫌いというものが存在します。相手を理解しようとし、嘘をつかず、真摯に取り組む姿勢が、より良い信頼関係を築くのだと思います。

そして、より良い信頼関係が、相手の本音を引き出し、こちらからの提案も通りやすくなり、本質的な課題の解決へと結びついていくのだと感じています。

まとめ

ヒアリングシートのメリット

  • 質問漏れがなくなる
  • 一定の質問クオリティが担保できる
  • 教育ツールとして使える

ヒアリングシートのデメリット

  • 柔軟な思考を阻害する
  • 会話の流れを遮断する
  • 思い込みは重大な危機を招く

ヒアリングの心得

  • いきなり本質に迫る質問はできない
  • 相手の思考を手助けする
  • 信頼関係はとっても大事
前田 大地

Designer / Developer

前田 大地

ウェブデザイナー。デザイン会社、システム開発会社を経てセブンシックスを設立。マーケティング、デザイン、テクノロジーのすべてに精通するオールラウンダー。クリエイティブ全般を担当。大企業案件にも多数参加する。